/After
この物語は上の作品とは別物である。
決して残酷では有り得ない物語の断片。
あの柊樹勇輔と同一人物かも知れないし、そうではないかも知れない。
そんなカレの、復活の短編。
あの残酷な終結が丁度良い人は読まなくていい。
せめてもの救いが欲しい人は読めばいい。
無理して読む必要はまるでないのだ。
◇
昼の雨が、俺の全てを洗い流してくれる。
そろそろ二日半、ただこうして意味もなく寝そべっているのかも知れない。
それだけの時間をかけて、やっと俺は起きあがった。
全身が怠く、生がまるで感じられない。
でも、何となく、俺の身体は歩くという行為を欲し、日常を欲した。
あのムカツク教師の顔が浮かんでくる。
しばらく、その理由について考えていたが、それらしい訳は考えついた。
もしかしたら、俺はアイツに嫉妬染みた感情を抱いていたのではないか。
今は無き黒姫シヅカの好意について、ではなく。
おそらくは、その充実に対して。
とても、幸せそうな顔で笑う男だった。人気者で、それでも付け上がらないで、まさに完璧という言葉をカタチにしたような教師。
だから、欠損しかないこの俺には恨めしかった。
俺にないものを平気で、気が付かないクセに持っていたから。
一歩を踏み出す。
裏路地に貯まった水は、相変わらず汚濁している。
それが跳ねて、ズボンを汚すが、今更気にするほどではない。
一歩、また一歩。
その度に、あらゆる日常の要因が脳裏を掠めてゆく。
そして、裏路地を出る頃に、やっと俺は黒姫シヅカと向き合った。
俺がからかって、俺が利用して、俺が必要として、俺が愛して、俺が裏切って、俺が殺した幼馴染み。
ふと、俺が生きているよりは、その罪を背負って死んでしまった方がいいのでは、という逃避に至りそうになる。
だが、それでは駄目だ。
今でこそ理解出来る。
俺は死ではなく、生きることによってその罪を償うべきなのだ。
何故なら、今、俺は死にたくて仕方がないのだから。
それを理由に死んでしまうわけにはいかなかった。
街は、相変わらず汚かった。
途絶えることのない人人人人人。
あのイキモノに汚染されたそこは、少しばかりの美すら捨て去って。
それは、とても正視出来るものではなかった。
だが、俺はそれを真っ正面から受け止めた。
その苦渋を浴びて生きることこそ、俺の贖罪だと思ったから。
限りなく無限に等しい人の群。
その中に、一つ。
見慣れた、面影があった気がした。
いつも俺の隣にいた少女。
俺が殺してしまった、一番大切だった筈のユメ。
もちろんそんなのは幻視だろう。
彼女がいる道理なんて、決してないのだから。
その幻想すら人混みに紛れてもう見えなくなった。
だが、果たしてそれは幻想だったのか、現実だったのか。
もしかしたら、俺はあの時裏路地に入った途端に気絶してしまって、
裂けた服は、その間に浮浪者に悪戯されたもので、
あるいは、全てがユメだったのではないだろうか。
そんな、都合の良い、しかし、願ってもない夢を見る。
そして、俺の隣には変らぬ彼女が――
そう考えて、止めた。
幻想を、ではない。
兎に角、今は家に帰って、服の汚れを落とすことを優先しよう。
そして、ゆっくりと眠って、明日から学校に行こう。
もし、彼女が現実にいるのだとすれば、その時に会えるのだろうから。
結果を見るまでは全てはIFでしかない。
彼女がいる可能性は五分と五分だ。
ウンザリした幻想だけど、そう思えるなら悪くない。
空っぽでもいい、嘘っぱちでもいい、それで希望が見えるのなら。
俺は、生きていける。
それに、ほら、俺は幻想をカタチにする英雄だったんだ。
だから、最後に一つ幻想しよう。
明日、もしかしたら、俺の隣の席に――
End
・あとがき〜にょろの独白
最後まで読んで下さり有り難う御座います。感謝。
あなたは百十三キロもの道のりを完走しました。テキストの重さ的に。
この作品は機械式少女様の未発表同人作品『Death Lori』の二次創作になります。
おそらく幾つかの矛盾点が出ると思いますが、まぁ、体験版から作ったので、ご容赦下さい。
さて、この作品。
サブタイトルが〜ホラーシネマ"イノセントグラフィティー"〜とありますが、これは結構考えて付けました。
ホラーシネマ……恐怖映画ですね。
夕凪は猟奇的な現場をビデオに撮って楽しむという或る意味素晴らしい趣味を持っているので、そこからの連想です。
こんなものを書く自分が云うのもなんですが――皆、こんな趣味に走っちゃだめだぞ。犯罪だから。
(にょろのいつもの犯罪半肯定的考察は気にしないで下さい。どちらみち最後は否定するし)
それからイノセントグラフィティーの方は、直訳で無邪気ならくがき……まぁ、ここでは柊樹勇輔の英雄的幻想を指します。
主人公主観で幻想という言葉を多用して、後半でその意義を否定し、最後の最後で肯定する……という流れをやったつもりですが、少しでも伝わったでしょうか?
幻想の独善性の表明と肯定的意味の探索。それが、この物語のテーマでもあります。
って自分に似合わず難しいことを云ってますが、格好付けてるだけで内容はあまり伴ってないので安心して下さい(何がだ
しかし、内容に様々なネタが鏤められているのは自分の持ち味なんでしょうか。改善点なんでしょうか。
格闘系ネタからタイプムーンネタひぐらしネタ……色々使ってるなぁ。反省。
ちなみに最後の方の、夕凪の「――だぁめ。……あなたは私に犯されなさい」は、「私はあなたを犯したい」になる予定でしたが、激しくパクりの為変更。らっきょネタ。
それでは最後に、機械式少女さんに向けて一言。
『Death Lori』制作頑張って下さい。そして自分は萌原ぷりおさんを応援しています(笑
・おまけ〜色々
キャラクターリストとか勝手に捏造した『勇者(と仲間たち)の必殺技一覧』とか、同じく捏造の『勇者君一口メモ』、そしてタイトルリストetc。
柊樹 勇輔……無気力な中学生。ユメに飢えている。人ならざる楢木葉魅幽と共に戦う内に、非日常の充実に呑まれてゆく。
黒姫シヅカ……勇輔の幼なじみ、勇輔に恋心を抱いている? ツンデレ? 格闘女。そして改造人間へ。
楢木葉 魅幽……本人のイメージ通りに対象を強化する接触能力者。ビアンカのネロ。白の中の黒。不純物。でもニセモノ。
フエゴ=マナナ……信夜の部下らしい。勇輔の甘い正義を快く思っていないが、悪を憎む正義の心は本物っぽい。でもニセモノ。
信夜教官……戦い方を教えてくれ、自分の前に立って戦ってくれる兄貴的存在。夕凪を敵視している? でもニセモノ。本物も。
三原夕凪……悪魔を創り出している張本人。英雄譚的なラスボス。ボードゲームのマスター。
悪魔……大抵のイメージ通りの悪魔に出来るだけ近い生物。この物語をより残酷にする為に必要なファクター。
勇者……30代中頃半そ半ズボン。毛が薄い謎の男。
『神絶の青き春風さん』……勇者の後継者らしい。
半捏造・勇者(と仲間たち)の必殺技一覧
『魔剣ガンベルク』……赤く縫ったポスターですら悪魔を引き裂く威力を帯びる大技。オリジナルの擬似霊体具現化・二重存在の構成による斬撃。
また天地開闢の時に生まれ出でた純粋なる絶対精神の結晶でもあるが、オリジナルは既に失われている。
どんなものでも存在そのものを切れるらしい。
『限定結界』……対象を限定する結界。防御から強化まで様々な使い方が出来る。
『絶対空間』……限定結界を外界に影響を及ぼす程に昇華させたもの。自己変革の著しい言霊の組み合わせと神性により実現。浸食系空間魔術。
本人が神性を持つか、神性を持つ武具・神言・生け贄等の付加神性を用いる。
『反転結界』……絶対空間を逆に浸食する。神話の世界の産物らしい。
半捏造・勇者君一口メモ
人の魂には神性と魔性があり、それがさらに地水火風空の五大元素の属性に別れている。
霊器官を作用させ、マナバーンに対しての防御を作動させる。通常の結界ではマナバーンは防げない。また霊器官の力は精神力と比例する。
言霊とは変革を起こしえるワードであり、その組み合わせを呪文という。魔術はイメェジにより使用でき、呪文はイメェジを深める自己変革を促す。
また言霊の組み合わせで、精神への作用も異なるので魔術の特性も変わる。派手で長ったらしい言霊を使えばその分魔術の効力も上がる。
/1 Bad fantasm&died
/2 He&She's daily
/3 Meet to white&black
/4 Colorless-hero&coated-heroine
/5 Sin
/6 Fantasm scorner
結局、柊樹勇輔がどうなったかは、皆様の脳内補完に任せます。
例えば、
@やっぱり黒姫シヅカは死んでいて、必死に生きてゆくバッドエンド。
A実は夕凪は元から黒姫シヅカには手を出してなくて、彼女の情報を元にホムンクルスを作成。そして部屋に押しかける。夕凪の「――黒姫シヅカは別だけどね」は嘘。なハッピーエンド。
B担任の黒桐が空の境界の黒桐の子孫で、夕凪の魔の手を察した某人形師が派遣した臨時教師だった。他人の身体すら再現出来るようになったトウコさんは予め黒姫シヅカの肉体の予備を作っておき、死んだ黒姫シヅカの魂を引き継いだ新しい彼女が学校にいる。なクロスオーバーエンド。
Cシェンロンに頼んで甦らせて貰うスーパーサイヤエンド。
D私が死んでも、代わりはいるもの。な新世紀エンド。
E死んでしまった幼馴染みは実は死徒に噛まれていた。吸血鬼として甦った彼女と共に、勇輔は再び闇の世界に足を踏み入れる。な月姫さっちんエンド。など、ご自由に幻想下さい。